日常会話やテレビ番組の昔を振り返るコーナーなどで、ふと
という言葉を耳にしたことはありませんか?

なんか聞いたことはあるけれど、ちゃんとした意味は分からないわ…
そんな風に感じる方が多いのではないでしょうか。それもそのはず、現代の日常会話ではすっかり使われなくなり、インターネットの検索窓で調べようとすると
- とらばーゆとは
- とらばーゆ 死語
- とらばーゆ 意味
といったキーワード候補が、ずらりと並ぶ状況になっています。
若い世代にとっては全く聞き馴染みのない言葉ですが(笑)、実はこの言葉、かつては流行語大賞にノミネートされるほど社会現象を巻き起こしたパワフルな言葉でした。
この【とらばーゆする】というたった一言の裏側には、日本の働く女性たちが自らの意思でキャリアを切り開いてきた、非常に力強く、そしてドラマチックな歴史が隠されています。



女性の働き方が多様化し、誰もが自由に仕事を選べるようになった現代において、この言葉が生まれた背景を知ることは、これからの新しい働き方を考える上でもとても興味深いテーマです。
この記事では、かつて一世を風靡した「とらばーゆする」という言葉の正確な意味、実はお洒落なフランス語から来ているという意外な語源、そして、なぜ現代では「死語」と呼ばれるまでになってしまったのかについて、日本の労働環境の劇的な変化とともに詳しく解説していきます。
女性の転職を意味する【とらばーゆする】とは?流行語になった背景
まずは、この言葉が一体どのような意味で使われていたのかを正しく確認しておきましょう。私自身の言葉でまとめるよりも、辞書に記載されている正確な解説を読むのが一番腑に落ちるはずです。
日本語俗語辞書には、以下のように明記されています。
トラバるとは俗語『とらばーゆする(トラバーユする)』を略したもので、女性が転職することを意味する。 元のとらばーゆするはリクルート出版から出ている女性向け転職雑誌『とらばーゆ』に動詞化する接尾語の『する』をつけたものである。
ちなみに『トラバーユ』とは仏語の”travail”で「仕事・労働」を意味するが、日本では雑誌名としての認知のほうが高いため「トラバる=女性の転職」という意味で定着している。
日本語俗語辞書より
このように、【とらばーゆする】という言葉は、株式会社リクルートが発行していた大人気女性向け求人情報誌の名称がそのまま動詞化したものです。
社会現象を巻き起こした!1980年代の女性のキャリア革命
この求人情報誌が創刊された1980年当時の日本は、今からは想像もつかないほど、女性の働き方が制限されていた時代でした。
男女雇用機会均等法もまだ施行されておらず、社会全体には以下のような古い常識が蔓延していました。
- 女性は結婚や出産を機に退職する寿退社が当たり前
- 女性社員の主な業務は、お茶汲みやコピー取りといった補助的な仕事
- 25歳を過ぎて独身で働いていると【行き遅れ】と呼ばれ、暗黙の退職圧力がかかる
- 男性と同じようにキャリアアップや昇進を目指す道がほとんど閉ざされている
現代の感覚からすれば信じられないような環境ですよね(^_^;)
そんな男社会の時代に、女性に特化した求人情報を集め、女性自身の意思で新しい仕事を選び取るという画期的な概念を世の中に打ち出したのが、このとらばーゆという情報誌だったのです。
とらばーゆの創刊は、当時の働く女性たちに以下のような【新しい当たり前】をもたらしました。
- 結婚しても働き続けたいというポジティブな願いを肯定した
- 自分の経験やスキルを正当に評価してくれる企業へ移る道を提示した
- 【転職=裏切り・ドロップアウト】というネガティブなイメージを払拭した
- 働く女性たちのリアルな悩みに寄り添い、孤独感を解消した
この革命的なアプローチにより、雑誌は爆発的な大ヒットを記録します。
この新しい文化そのものが、とらばーゆするという一つの言葉に集約され、働く女性たちの合言葉として浸透していったのです。
実はフランス語!とらばーゆの語源と深い意味
辞書の引用にもあった通り、この言葉の語源はフランス語のtravail(トラバーユ)です。直訳すると仕事や労働、あるいは骨折りといった意味を持つ単語です。
ここで一つ、大きな疑問が浮かびます。
なぜ、英語のワークやジョブではなく、あえて馴染みの薄いフランス語が採用されたのでしょうか?
フランス語の響きが持つお洒落さとポジティブな魔法
当時の日本の労働環境において、転職という言葉にはどうしても暗くて重苦しいイメージが付きまとっていました。ひとつの会社で定年まで勤め上げることこそが絶対的な美徳とされていたため、会社を辞める人は堪え性のない人というレッテルを貼られがちだったのです。
しかし、そこにフランス語を持ってくることで、受ける印象が180度変わります。
- 英語のワークなどが持つ、生々しい労働のイメージを消し去る
- フランス語特有の洗練されたお洒落な響きが、自立した女性の美しさを連想させる
- 裏切りや挫折ではなく、新しい人生の扉を開くというワクワク感に変換される
なんとなくフランス語というところが洒落た感じがしますよね。もし仮に、この雑誌の名前が女性の転職情報のような直接的なものであったなら、これほどまでに女性たちの心を掴み、日常会話で使われる流行語になることは絶対にありませんでした。



この洗練された言葉の魔法が、未知の世界へ飛び出す恐怖心を和らげ、転職に対する心理的ハードルを大きく下げてくれたことは間違いありません。
なぜ死語と言われるのか?とらばーゆが消えた3つの理由
かつては流行語大賞にノミネートされるほどの社会現象になった【とらばーゆする】という言葉ですが、現代の日常会話で耳にすることはすっかりなくなりました。
インターネットで「とらばーゆ 死語」と検索されるのも当然の流れです。では、なぜこれほどまでに浸透した言葉が使われなくなってしまったのでしょうか。そこには、時代とともに変化した3つの大きな理由がありました。
1. 転職が当たり前の日常風景になった
一番の理由は、転職すること自体が特別な行為ではなくなり、ごく当たり前の日常風景になったからです。
昔は、女性が自らのキャリアアップのために会社を移るという行為が非常に珍しく斬新だったからこそ、それを表現するための特別な動詞が必要でした。しかし現在では、労働環境は以下のように大きく変わりました。
- 終身雇用制度が崩壊し、ひとつの会社に一生しがみつく概念が薄れた
- 男女問わず、一生のうちに何度か仕事を変えることが当たり前になった
- スキルアップのための転職が、むしろポジティブに評価されるようになった
誰もが当たり前に転職活動をする時代になったことで、あえて特別な言い回しをする必要性がなくなってしまったのです。
2. カタカナからひらがなへの表記変更
媒体のロゴデザインの変遷も、言葉の響きや使われ方に影響を与えました。
昔の雑誌を知っている方は、最初はカタカナでトラバーユと表記されていた記憶があるのではないでしょうか。いつからか、時代の変化とともに親しみやすさを重視して、ひらがなでとらばーゆという丸みを帯びたデザインに変更されていました。
カタカナのシャープな印象から、ひらがなの柔らかい印象へと変わったことで、最前線でバリバリ戦うキャリアウーマンの転職という尖ったイメージから、一人ひとりのライフスタイルに優しく寄り添うお仕事探しへと、ブランドの立ち位置が少しずつ変化していったように感じます。
3. 働き方の選択肢が爆発的に増えた
正社員として別の会社に移ることだけがキャリアの成功ではなくなったことも大きな要因です。現在では、
- 派遣社員
- 契約社員
- フリーランス
- リモートワーク
- 時短勤務
、、など、働き方の選択肢が爆発的に増えました。
転職というひとつの言葉ではくくりきれないほど多様な働き方が生まれたため、別の会社に正社員として移るというかつての意味合いだけでは、現代の複雑な仕事探しを表現しきれなくなったのです。
言葉が消えたことは少し寂しい気もしますが、それは同時に、女性の転職という行為が日本の社会に完全に根付き、働き方の自由度が格段に上がったという素晴らしい証拠でもありますよね。
休刊からネット移行へ!とらばーゆが発信し続けたメッセージ
時代が昭和から平成、そして令和へと移り変わる中で、人々の仕事の探し方も大きく変化しました。
かつては駅の売店や書店で分厚い求人情報誌を買って帰るのが当たり前でしたが、今ではスマートフォンひとつでいつでもどこでも求人を検索できる時代です。
こうした時代の波に合わせ、紙の雑誌としての発行は長い歴史に幕を下ろし、週刊での発売は終了しました。しかし、媒体がインターネットのサイトへと移行しても、働く女性を応援するという根本的なメッセージは決して消えることはありません。
うに悩んでいる同世代の女性たちがこんなにいるんだと勇気をもらった人は、決して少なくないはずです。
過去の歴史から考える、私の働き方の見直しと決意
ここまで、とらばーゆ 意味や言葉が消えた疑問の背景にある、女性の働き方の歴史と労働環境の劇的な変化について詳しく振り返ってきました。
とらばーゆという言葉自体は死語になってしまったかもしれませんが(苦笑)、かつての女性たちが新しい言葉を武器にして、自分らしい働き方を必死に探し求めたそのエネルギーは、確実に今の時代にも受け継がれています。



時代は変わっても、女性が働き続ける上で直面する悩みや葛藤の本質は、驚くほど変わっていないのだと痛感します。
正社員として走り続けることへの限界と葛藤
私自身、毎日の仕事と家事、そして育児に追われる中で、正社員としてこのまま走り続けることに大きな限界を感じていました。
30代も半ばを過ぎ、20代の頃のように体力だけで乗り切ることは難しくなりました。それなのに、正社員という立場にいると、以下のような見えないプレッシャーに常に押しつぶされそうになります。
- 終わりの見えない残業や、急な業務の振替への対応
- 子供の急な発熱で休むたびに感じる、職場への強烈な罪悪感
- 「これ以上は無理」と言い出せない、責任あるポジションの重圧
- 家族と過ごす貴重な時間を削ってまで、会社に尽くすことへの虚無感



このまま会社のルールに縛られ続けることが、本当にわたしの望む人生なのだろうか…
何度自問自答を繰り返したか分かりません。
派遣社員へ。働き方を見直すという前向きな選択
そして深く悩んだ末に出した答えが、プライベートの時間を最優先にできる派遣社員という働き方へのシフトでした。正社員という安定した立場を手放すことは、決して簡単な決断ではありません。
しかし、これからの私の働き方には、絶対に譲れない以下の条件がありました。
- 残業がなく、定時で確実に帰宅できること
- 仕事と家庭の境界線をはっきりと引き、プライベートを持ち込まないこと
- 過度な責任を背負い込まず、決められた業務に集中できる環境であること
- 子供の笑顔に、心からの余裕を持って向き合える時間を作ること
かつての女性たちは、キャリアアップのために会社を辞めることをと【らばーゆする】と呼びました。そして今の私は、家族との時間と心のゆとりを取り戻すために、働き方のペースを落とすという選択をしています。
目指す方向性は少し違うかもしれませんが、どちらも自分の人生の主導権を自分自身で握り、より心地よい場所を探すという前向きな行動であることに変わりはありません。



私自身、こどもが高校生になるまでは、正社員として本格的な転職活動をすることはないかもしれません。
しかし、世の中の働き方のトレンドや、女性の多様な選択肢を応援してくれる求人サイトの情報は、これからも欠かさずにチェックしていこうと思っています。
周りの常識や過去の経験に縛られることなく、自分と家族が一番笑顔でいられる働き方を、これからの変化を楽しみながら見つけていけたらいいですよね(^_^)。

